インプラント
どのようなときにインプラントが必要とされるか
歯科治療で提供される人工歯根のことをインプラントといいます。
疾病や外傷などで歯が失われると従来は入れ歯やブリッジという方法でそれを補ってきました。
しかし現在では人工歯根を顎の骨に埋めて、その上に義歯を立てるインプラントが一般化してきています。このインプラントは入れ歯やブリッジに比べて多くのメリットを持っている治療法であり、今では多くの患者様に提供されています。
最近人気となった治療法と聞くと「安全性は保証されているのだろうか?」「その治療法の経験を持つ歯科医はいるのだろうか?」と疑問に思う人もいるかもしれません。実はインプラントは決して新しい治療法ではなく、数十年前からすでに患者様に提供されている治療法なのです。そのためその安全性は保証されていますし、経験を積んだ歯科医も数多く存在しています。
歯がなくなった状態を放置することで招く弊害
何らかの理由で歯がなくなったときにその状態を放置するとどのような事態を招くのでしょうか? 空いた部分がそのままになるだけではないか、と思う人がいるかもしれませんが実際はそうではありません。口内全体に徐々に悪い影響を及ぼすことがあるのです。
1.周囲の歯が移動する
歯が失われるとその空いたスペースに隣接した歯が徐々に倒れ込んだり、移動してきたりします。また失われた歯と噛み合っていた歯が噛み合う相手を求めるように伸び始めます。
2.噛み合わせが乱れてくる
周囲の歯の移動により、それまで正しかった噛み合わせがだんだんと崩れてきます。
3.歯の状態が悪くなる
歯が失われたままでは噛みにくくなり、反対側ばかりを使うようになります。そうすると片方にだけ負担がかかってしまい、歯にダメージを与えることになるのです。また噛み合わせが乱れることで特定の歯にやはり負担がかかってしまい、その歯がむし歯や歯周病になりやすくなります。
4.見た目が悪くなる
歯並びの乱れは見た目の悪さにもつながってしまいます。また奥歯が抜けた場合にはそれまで奥歯で支えていた力が前へ前へとかかるようになります。すると前歯に負担がかかるようになり、前歯に隙間ができたり、出っ歯になったりしてしまいます。この現象はフレアーアウトと呼ばれています。さらに片方だけで噛むようになると噛んでいない方の筋肉が弱まり、皺やほうれい線が目立つようになります。
5.顎関節症が引き起こる
噛み合わせの悪さは顎の筋肉や関節に過度に負担をかけ、顎関節症を発症させることもあります。顎関節症は口や顎の周りが痛んだり、口が開きにくくなったりと日常に支障を来たすことがあります。
6.身体全体に不調が生じる
口内の異常は口や顔の周りだけに留まりません。筋肉は体中につながっているので噛み合わせが悪くなって顎の筋肉を傷めると、それが肩凝りや片頭痛を引き起こすことがあるのです。また最終的には四肢の痺れまで発症する可能性もあります。
7.義歯治療の妨げとなる
前述したように歯が抜けた状態をそのままにしていると歯が移動し始めて歯並びが乱れることがあります。その状態でようやく義歯治療に踏みきっても、義歯を入れるスペースが狭くなっていてそのままでは治療ができなくなることがあります。そういうときには移動した歯を削ったり、矯正治療を必要としたりと治療自体が大掛かりなものとなってしまいます。
当院のインプラント治療の方針
当院で使用しているインプラントはストローマン社製です
当院で使用しているインプラントは高品質で知られるストローマン社製です。またどのような治療でどのような効果が得られるのかを患者様と共有するために事前の診断を丁寧に行うようにしています。
診断ソフトを使うことで高精度な情報を患者様と共有することができます
治療前に行う診断においてはストローマン社の診断ソフトを用いることで精度の高い事前診断結果を得ることができます。それは視覚的にもわかりやすいものですので患者様にも診てもらい、自分の口内の様子やどのような治療が行われる予定かを確認していただきます。
セカンドオピニオンもお気軽にお申し出ください
すでに他院でインプラントのための診断を受けている方で、セカンドオピニオンをご希望の方はご連絡ください。当院は診断だけでも喜んでお受けします。
インプラントのメリットとデメリット
インプラントは従来の義歯治療に比べて優れた点を数多く持つ治療法ですが、注意すべき点もあります。ここではメリットとデメリットを確認していきます。
インプラントのメリット
- しっかりと噛める
- 見た目の仕上がりが自然
- 使用感が良い
- 外す手間がいらない
- 通常のブレッシングで手入れができる
- 周囲の歯を傷めることなく治療ができる
- しっかりとメンテナンスをすれば長期間にわたって使用できる
インプラントのデメリット
- 保険診療(保険証の範囲外、全額自己負担の治療)となるため保険診療(保険証の範囲内、三割負担の治療)と比べると治療費が高額となる
- 治療の期間が長い。平均して数ヶ月は必要となる
- 外科的手術をするため合併症が起こるリスクがある
- 骨の状態やかかっている疾病によってはただちに治療を行えないことがある
- メンテナンスを怠ると抜け落ちることがある
その他の義歯治療の特徴
入れ歯の特徴
入れ歯は最もポピュラーな義歯治療ですが、「取り外し式」であることが最大の特徴でしょう。そしてこの特徴は長所でもあり、短所でもあるということができます。長所としては「メンテナンスの際に手に持って隅々まで掃除ができる」ことが挙げられます。反対に短所としては取り外し式のため他の義歯治療と比べて固定力がどうしても劣ってしまい、使用時に違和感を覚えることがあるということです。まだ口内にまだ歯が残っているときに用いる「部分入れ歯」ではクラスプと呼ばれるバネをその歯にかけますが、それが見た目を損なってしまうこともあります。
ブリッジの特徴
失われた歯の周囲の歯を削り、それにかぶせるようにして義歯を固定するやり方がブリッジです。固定力は強いのですがまだ健康であっても隣接する歯を削らなければならず、口内の歯全体で見ると寿命を縮めてしまいます。また隣接する歯にかぶせる部分は隙間が生まれやすく、そこに食べかすが溜まってさらなるむし歯を発症させてしまう危険性もあります。
インプラントの特徴
「天然歯のようにしっかり噛めること」や「見た目の仕上がり自然であること」がインプラントの特徴です。治療領域は歯が失われた部分だけですので周囲の歯にダメージを与えることもありません。メンテナンスも他の天然歯と同じようにブラッシングをすればいいだけなので手間は少ないということができるでしょう。ただしメンテナンスを怠るとインプラントを支える土台が弱り、抜け落ちてしまうこともあります。
他の義歯治療と比べた場合のインプラントのメリット
その他の義歯治療と比べてみると、インプラント治療には次のようなメリットがあると言えるでしょう
- 見た目の仕上がりが自然
- しっかりと噛むことができる
- 使用感が良い。食事中に外れることがない
- 周囲の歯にダメージを与えずに治療ができる
- メンテナンスがしやすい
インプラント治療を受けられない方
インプラントは外科手術を行うため合併症を引き起こすリスクがあります。
そのため次のような疾病がある方はただちに治療を受けられるとは限りません。
- 糖尿病・・感染を起こしやすく、傷の治りが悪い
- 高血圧・・血が止まりにくく、脳梗塞などの合併症を起こりやすい
- 心臓病・・心臓発作を起こしたり、ペースメーカー使用中の人は心内膜炎を起こす危険がある
- 骨粗鬆症・・外科手術をすると治療薬の影響で骨が壊死することがある
- 腎臓病・・血が止まりにくくなる
- 肝臓病・・血が止まりにくくなる
- 癌の治療中・・顎の骨に放射線治療を受けていると骨の治りが悪くなることがある
以上はあくまで例であり、患者様ごとの状態・数値によって対応は変わってきます。インプラントに興味はあるものの持病が心配だという方は一度ご相談ください。
インプラント治療の手順
インプラント手術は大別すると「一回法」と「二回法」の2通りになります。それぞれの名前が示す通り、一回法は手術が一回、二回法は二回の手術を必要とします。現在では二回法が一般的になっていますが、これは感染のリスクを防げることやあらゆる変化に対応しやすいという理由からです。
一回法
- 麻酔をした歯茎を切開し、骨に穴を開ける
- 骨に開けた穴にインプラント体を埋め込み、土台が露出した状態で歯茎を縫い合わせます
- インプラントと骨が結合したのを確認したら型取りをし、最後に仮蓋をします
二回法
一次手術
- 麻酔をした歯茎を切開し、骨に穴を開ける
- 骨に開けた穴にインプラント体を埋め込み、インプラント体を完全に覆うように歯茎を閉じる
- 骨とインプラント体が結合するのを数ヶ月待つ
二次手術
- 歯茎を切開し、インプラントを露出させる
- インプラントに土台を装着する
- 歯茎を切開した部分が治ったら型取りをし、被せ物をする
インプラントに関して気をつけること
インプラントは他の義歯治療と比べると使用感が良い、メンテナンスがしやすいなど多くのメリットがあります。また周囲の歯にダメージを与えることなく治療を終えることができるので、他の歯の寿命を縮めることがありません。そしてメンテナンスをきちんと行うことで長い期間にわたって使用することができるという画期的なものです。
しかし注意する点はいくつかあります。
まず原則的に自由診療となるため治療費が高額になることがあります。またメンテナンスを怠るとインプラント自体が抜け落ちてしまうこともあり得ます。こういったことは担当医師と治療前からきちんと話し合い、インプラントがどのようなものであるか、どのくらいの費用がかかるか、そしてどのように生活に影響するかを理解したうえで治療を受けるようにしましょう。また喫煙や過度のストレスなどがあると口内環境が乱れがちになり、やはりインプラントが抜け落ちる原因をつくることがあります。インプラント治療をしたのならそれを機にご自身の生活習慣を見直すようにしてみましょう。